あわのうたの歴史 ― イザナギとイザナミは国作りに何を求めたのか(電子本)
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あわのうたの歴史 ― イザナギとイザナミは国作りに何を求めたのか
序文
日本神話の冒頭に置かれた国生みの物語は、単なる天地開闢の神話ではない。そこには「国を作る」とは何か、「人が生きる場を整える」とはどういう行為なのかという、根源的な問いが静かに織り込まれている。
その中心に立つのが、イザナギとイザナミという二柱の夫婦神であり、彼らが唱え、響かせたとされる原初の言葉――「あわのうた」である。
本書は、この「あわのうた」を、後世の呪文や秘歌としてではなく、国作りの思想そのものとして読み解く試みである。
音・言葉・秩序・循環という視点から、イザナギとイザナミが何を整え、何を残そうとしたのかを辿る。その舞台として注目するのは、古代より始まりの気配を色濃く宿す阿波の地である。
神話は空想ではない。人々が自然と向き合い、土地に根を下ろし、共同体を築こうとした記憶の層である。
本書を通して、あわのうたに込められた国作りの思想が、現代を生きる私たちの足元にも静かにつながっていることを感じ取っていただければ幸いである。
第一章 あわのうたとは何か
あわのうたの基本構造と、その音の連なりが持つ意味を概観する。呪文ではなく、秩序を生む言葉としての性格を明らかにする。
第二章 音から始まる世界
古代において音と言葉が世界認識の基盤であったことを示し、あわのうたが「始まりの音列」である理由を探る。
第三章 イザナギとイザナミの役割
二柱の神が担った役割の違いと補完関係を整理し、夫婦神という形に託された思想を読み解く。
第四章 国生み神話の再読
島々を生む物語を、地理的神話ではなく「秩序生成の物語」として読み直す。
第五章 なぜ歌ったのか
イザナギとイザナミは、なぜ言葉ではなく歌として世界に向き合ったのか。その必然性を考察する。
第六章 あわの音と自然循環
母音の連なりと、風・水・火・土といった自然循環との関係を見ていく。
第七章 生と死の境界
イザナミの死と黄泉の国の神話を通し、あわのうたが生と死の循環を含んでいることを示す。
第八章 禊と再生
イザナギの禊に表れる再生思想と、音による浄化の意味を読み解く。
第九章 天照・月読・スサノオの誕生
三貴子誕生の場面を、あわのうた的秩序の展開として捉える。
第十章 スサノオと国作りの試練
破壊と再編を担う存在としてのスサノオを、国作りに不可欠な要素として考察する。
第十一章 阿波という舞台
なぜ阿波が「あわのうた」と結びついて語られてきたのか、地勢と古代信仰から探る。
第十二章 言葉以前の信仰
記紀以前の層に存在した、音と所作による祈りの形を復元的に考える。
第十三章 あわのうたと身体
歌うこと、息をすること、立つこと――身体性と国作り思想の関係を明らかにする。
第十四章 共同体を生む音
あわのうたが個人の修行ではなく、共同体形成のための基盤であった可能性を論じる。
第十五章 文字化されなかった理由
なぜあわのうたは、長く文字に固定されなかったのか。その思想的背景を考える。
第十六章 後世の秘伝化
中世以降、あわのうたが秘儀・秘歌として扱われていく過程を整理する。
第十七章 神話と政治
国作り神話が、どのように権力や統治の正当化と結びついていったのかを検証する。
第十八章 失われたもの、残されたもの
神話の中で失われた思想と、今なお残る感覚の違いを対比する。
第十九章 現代におけるあわのうた
現代社会において、あわのうたの思想をどのように読み替え得るのかを考える。
第二十章 イザナギとイザナミが求めた国
二柱の神が最終的に目指した国作りの姿を総括し、人と自然が共に在るための条件を提示する。
結びに
あわのうたは、過去の遺物ではない。それは今も、私たちの足元で静かに響き続けている。
