卑弥呼は、神山の居城から国府へと降りた ― 阿波に眠る「巫女王の都」誕生の記憶 ―(電子本)
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卑弥呼は、神山の居城から国府へと降りた ― 阿波に眠る「巫女王の都」誕生の記憶 ―
序文
卑弥呼という名は、日本史の中で最も知られながら、その実像はいまだ霧の中にある。『魏志倭人伝』の記述は限られ、議論は長く「どこに邪馬台国があったのか」という場所論に費やされてきた。
しかし本当に問うべきは、なぜ人々は卑弥呼を王として戴いたのかという点ではないだろうか。
本書は、卑弥呼を動いた王として捉える。古代において神聖性は山に宿り、巫女王は人里離れた地で神託を下した。
阿波の神山は、その条件を備えた地であり、卑弥呼が神に近い存在として坐した場所と考えうる。
やがて国が形を成すと、人々は祈る王だけでなく、治める王を求めた。人口の増加と農耕の拡大により、王権は山から平野へと降りてゆく。その象徴が、政治と祭祀の要地である国府である。
神山から国府への移動は、単なる遷都ではない。それは、巫女王から国家の象徴へと変わる王権の転換点であった。本書は、卑弥呼を「場所の謎」ではなく、王が動いた意味から描き直す試みである。
目次(20章)
第1章 卑弥呼という巫女王
政治と祭祀を一身に担った女性支配者。
第2章 卑弥呼の時代背景
争乱の倭国と、人々が求めた「神の声」。
第3章 魏志倭人伝に描かれた卑弥呼
見える記録と、書かれなかった本質。
第4章 神山という聖なる隠れ里
外界から隔絶された、巫女王の居城にふさわしい地。
第5章 神山に坐した卑弥呼
山・森・霧の中で神託を下す存在。
第6章 山岳信仰とシャーマニズム
自然と交信する巫女王の宗教的基盤。
第7章 なぜ卑弥呼は山を下りたのか
人口増加、農耕拡大、統治領域の拡張。
第8章 巫女から王へ
宗教的権威から政治的権威への転換。
第9章 国府という新都
平野・水利・交通を掌握する戦略的拠点。
第10章 遷都は国家儀礼であった
神託に基づく、計画された移動。
第11章 国府に築かれた巫女王の都
祭祀空間と政務空間の分離と統合。
第12章 卑弥呼の政治構造
直接統治を行わない「象徴王権」。
第13章 男弟(弟王)の役割
卑弥呼を補佐した現実政治の担い手。
第14章 神山と国府を結ぶ霊的軸
山の神性と平野の現実を結ぶ見えない線。
第15章 卑弥呼の死と継承
宗教王権の脆さと再生。
第16章 台与(壹與)への移行
巫女王制の継続と変質。
第17章 卑弥呼と天皇制の原型
のちの天皇に重なる「祭祀王」の姿。
第18章 考古学が示す阿波の可能性
地形・遺構・信仰が語る邪馬台国像。
第19章 なぜ阿波説は語られなかったのか
中央史観が消した地方王権の記憶。
終章 卑弥呼は阿波に還る
神山から国府へ降りた卑弥呼の道は、日本における国家と宗教の分岐点そのものであった。その記憶は今も、阿波の山と平野に静かに息づいている。
