轟神社と海部族の古代史 ―― 阿波南部に残る水神・滝信仰・海人族の謎 ――(電子本)
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轟神社と海部族の古代史 ―― 阿波南部に残る水神・滝信仰・海人族の謎 ――(電子本)
■序文(立ち読み用)
徳島県海陽町の山奥に、轟く水音を響かせる聖地がある。轟の滝、そしてその滝を神域として祀る轟神社である。
深山から落ちる水は、岩を打ち、川となり、海部川を下って海へ注ぐ。この流れは、単なる自然の水路ではない。
古代の人々にとって、それは山の神が水を生み、川の神が命を運び、海の民がその恵みを受け取る「神の道」であった。
轟神社の歴史は、天正年間の修験者による創建伝承として語られる。しかし、その背後には、さらに古い水神信仰、滝信仰、山岳信仰が眠っている。
御祭神に水波女命・水象女命・大山祇命などが祀られることは、この社が水と山の霊力を中心にした神社であることを物語っている。
そして、この地を考えるうえで欠かせないのが、海部族・海部氏の存在である。海部は海の民であり、航海・漁撈・交易に関わる一族として語られる。
しかし海の民は、海だけで生きていたのではない。川をさかのぼれば山があり、水源がある。
海部川の源流域に鎮まる轟神社は、海部族の生活と信仰を支えた「水の奥宮」とも考えられる。
本書は、轟神社を単なる滝の名所としてではなく、阿波南部の古代信仰を読み解く鍵として見つめ直すものである。
滝、水神、龍神、修験道、海部族、海部川、そして阿波の神話的古代史。これらを一本の水脈としてたどるとき、轟神社は、阿波の山と海を結ぶ重要な聖地として浮かび上がってくる。
第1章 轟神社とは何か
徳島県海陽町に鎮座する轟神社の所在地、御祭神、滝との関係を概説する。
第2章 轟の滝という神域
轟の滝がなぜ古くから神聖視されたのか、滝信仰の視点から読み解く。
第3章 水神を祀る社
水波女命・水象女命を中心に、轟神社に宿る水の神格を考察する。
第4章 山の神・大山祇命の意味
山の神がなぜ水源の社に祀られるのか、山と水の関係から探る。
第5章 滝は神が降りる場所だった
古代人が滝を神霊の降臨地、禊ぎと再生の場として見た理由を解説する。
第6章 轟神社の創建伝承
天正年間、修験者・吉祥院興栄による創建伝承を確認する。
第7章 修験道と滝行の世界
轟神社が山岳修行、滝行、霊験信仰とどのように結びついたかを考える。
第8章 荒神輿と滝壺入りの神事
秋季例大祭に見られる神輿の滝壺入りを、古代水神祭祀の名残として読む。
第9章 海部川という神の道
轟の滝から海へ流れる海部川を、山と海をつなぐ神話の水路として見る。
第10章 海部族とは何者か
海人系氏族としての海部族・海部氏の性格を整理し、阿波南部との関係を探る。
第11章 海の民と山の水源
海部族が海だけでなく、川と水源を重視した可能性を考察する。
第12章 轟神社は海部族の奥宮か
轟神社を、海部川流域の海部族信仰を支える水源の聖地として位置づける。
第13章 龍神信仰と滝壺の謎
深い滝壺、轟く水音、白い水煙が龍神信仰と結びついた背景を探る。
第14章 海上安全と水神信仰
山の水神がなぜ漁業・航海・海上安全の祈願と関係するのかを解説する。
第15章 阿波南部の隠れた古代信仰
海陽町・海部川流域に残る山岳信仰、海人信仰、修験信仰の重なりを見る。
第16章 轟神社と剣山系信仰
轟神社を阿波南部の山岳霊場として、剣山系の信仰世界と比較する。
第17章 水が生む王権と祭祀
古代において水源を押さえることが、祭祀権や地域支配と関係した可能性を考える。
第18章 神話として読む轟神社
轟神社を「水の女神が降りる場所」として、阿波神話の中に再配置する。
第19章 海部族と阿波古代史の謎
海部族、海部川、轟神社を結び、阿波南部が古代史上持つ意味を考察する。
第20章 轟く水は今も語る
轟神社に残る水神信仰を、現代に伝わる阿波古代史の記憶としてまとめる。
